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兵庫県三田市は郷の音(さとのね)ホールでの「アーティスト・イン・レジデンス」コンサートが終わりました。

物語を語ると言う役割を初めて務めたのは、響きの良いエレガントな空間。

JR三田駅近く。

楽器の響きを捕まえるのとは全く違った感覚で、自分の声が届くポイントをホールの職員スタッフの皆さんに教えて頂きながらのリハーサル。
マイクテストもこれまでにない種類の緊張の連続…。

今回の曲目は、グリーグの組曲〈ペール・ギュント〉。
自由奔放に世界を旅して回るペール・ギュントを主人公に、故郷で彼をしのび、待ち続ける妻ソルヴェイグの語りを軸に、サクソフォーンとピアノによる演奏と絡めての展開となりました。


共演のお二方

声で演じると言う事は私にとって、1人の人間の確かな人格を、その心の痛みや喜び、悲しみと叫びも全て声を通してのみ伝えると言うこと。
そして聞き手の耳と心を意識しながら、自分の声を操ると言うこと。
「演じる」と言う行為の中に、これまでの自分の感覚や感情、記憶、それらを総動員して声の中に落とし込んでいくと言う作業。
これまで、鍛錬からは無縁であった自分の声という器が、その脆弱さゆえに割れてしまわないように注意しながら、満たせるだけの感情を満たしていく。

それらを舞台の上でこなすと言うことの難しさと興奮はとてつもなく大きく、同時に自分の殻を自分で破る難しさと羞恥心を私に持たせましたが、思いのほか面白く、スリリングなものでした。

終演後に。

「演じる」ことで自分とは別の誰かの心の形、人格を得る。
音楽によって、心の風景と感情の色がますます強まる。

「ことば」と「音楽」が溶け合う臨界点で、「演じる」という行為の意味が自分の内側で鮮明に変化していく様を、不可思議な気持ちで眺めていました。

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