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ということで2010年のイギリス映画「英国王のスピーチ」。

これまでの記事はこちら。

「エエ声」が、欲しいのだ!@声を演じる①
「声」は快をつくるのか?@声を演じる②

日本でおなじみのチラシデザインはこちら。

この映画は、吃音に苦しむ英国王ジョージ6世(現英国女王 エリザベス2世のお父様)が主人公です。
彼が生きた20世紀初期、ラジオと言う新しいメディアが台頭し始め、当時の君主にとっては、臣民の前に姿を見せるということにとどまらず、彼自身の声と言葉でスピーチをすると言う事は不可欠なことでした。

兄が若くして退位したことにより、予期せず王位につくことになったジョージ6世が、オーストラリア人の言語療法士ライオネル・ローグのサポートのもと、本人曰く「(自分自身の)数多くの欠点のうちの一つ」である吃音を克服し、国王としての声と言葉を獲得していくまでを、映画は克明に描いています。

劇中私の目を引いたのが、ローグがとった治療法。

呼吸、発音から発話、身体の機能の理解を促すのにとどまらず、劇中のローグは、繰り返し繰り返し王に命じるのです。

「Sing it. 歌って」。

思い返してみれば、この言葉。
私自身がヴァイオリンのレッスンの中で、恩師から口を酸っぱくして言われ続けていたことでした。

手にしているものがヴァイオリンであっても、「声を出して歌って」。
自分の悪声を披露することに躊躇して、身をすくませていたとしても「声を出して歌って」。
怖気付いて半ベソをかいていた私に、恩師は何度も何度も繰り返しました。

「歌ってごらん、そうしたらわかるから。」

恥ずかしさと言い知れない反発心から、「一体それで何がわかるのさ」と目と鼻のあたりを結露させていた事を思い出しつつ、考えました。
当時の幼い頭では理解できなかったことでしたが、あの時恩師が私にさぐり当てさせようとしていたのは「歌の源泉」ではなかったか、と。


続きます。

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