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「パーソナル・ソング」という言葉を聞いたことはありますか?

私がこの言葉を知ったのは、2014年に公開されたドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング」がきっかけでした。
認知症、アルツハイマー病に罹患した患者への音楽療法の一つのアプローチとして、「1000ドルの薬より、1曲の音楽を」をスローガンに、音楽が患者の一人ひとりの感情と記憶に働きかける力の強さが取り上げられています。


何ですか?

音楽は時に、無防備に打ち捨てられた記憶にさえ強い光を与えるものだと思います。
この曲を引っ張り出して聴いてみると、初めてそれを耳にしたときの自分、抱えていた悩み、興奮、読んでいた本、なにもかもが浮かび上がってきます。
数年数十年など飛び越えて、「いつかの自分」に舞い戻ってしまえる曲。
時間と場所など関係なく、自分の内奥に触れてくる曲。
それがパーソナルソングだと私は解釈しています。

この「The life I never led」で歌われるメアリーロバートの悔恨と決意は、私自身のロンドンでの記憶と結びついています。

毎日が喧騒とお祭り騒ぎのようにエネルギーに満ちた街。
タガの外れたアイデアや、遊びが子どものように弾んでいた街。
「この世界に、きっと不可能なものなんてない、自分がそれをのぞむならば」
 そう信じさせてくれる街。

その街の豊かさ、優しさ、怖さ、醜さ、多彩さ。
それらが10年経っても色あせず心に残されている今、そこでで抱いた夢や憧れ、つきぬ郷愁が、心の中で脈打ち続けているのをこの歌に触れるたびに、ふと思い出す。

私のパーソナル・ソング。


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