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歌と言葉の持つ力が二階席にまで届き、波を起こすように心をかき乱されたことを思い出します。
「打たれる」というのはこういう事か、改めて感じた覚えがあります。

この曲に出会った当時の私は、その一週間後には離れ行かなければいけない大好きなこの街に、自分が開ききれなかった扉が、無数に残されていることを自覚していました。
2年間の留学生活の中で、小さな頃には憧れと夢の中にしか存在していなかったロンドンという街は、自分の日常になりました。
それでももっともっと見たい世界、もっともっと学びたいことがあった。

「また来よう」「また会える」
「またね」「また今度ね。」

慌ただしい日常の中でそうして見送ってきた宝物が、手付かずのまま自分の後ろに山のように積み残されている。
小さなためらいに足をとられて、自分の目の前に鮮やかに開いた扉をあっけなく閉じてしまうこともありました。
未来に後回しの約束をするのではなく、今すぐ、破れかぶれであっても勇気をもって踏み込んでいたならば、どんなに惨めな失敗をして恥ずかしい思いをしたとしても、自分の世界は確実に大きく色を変えたでしょう。

そんな心持ちが、夢や願いの一つ一つ、その後姿を見送るたびに後悔ばかりを心に残してしまったメアリー・ロバートの歌に重なるように思えました。

一つの歌が、自分の感情に共鳴して、内側から自分を震わせる。
その力をそれまでにないほど強く感じました。
そうした意味で、この歌が私の「パーソナル・ソング」になりました。

次回で終わりです。
つづきます。


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