リアルのありか@赤毛のアンを見かけたら
縁あってロンドンに二年間留学していた時(2008年から2010年まで)、街で見かけるものの一つ一つが私にとっては驚きの窓でした。
大英帝国時代の名残である植民地文化の流入を受け、多種多様な人種と文化のるつぼとして息づく街。

古いものと新しいものが、拮抗しつつ共存するその街を歩いている時、私は生まれて初めて「赤毛のアン」を見かけました。
赤毛のアンの物語の序盤、アンのお下げ髪をつまんで「にんじん、にんじん」とからかうクラスメートのギルバートの頭に、アンが当時ノート用に用いられていた石版を叩きつける描写があります。
いくら赤毛といったってアニメじゃあるまいし、にんじんみたいな色の髪の毛なんてさすがにあるわけない、と幼心に突っ込んだ覚えがあります。
自分の目に触れたことのないものを、リアルと認めることはえてして難しい。
けれども赤い髪を見かけた時、絵本や物語の中でしか知らなかった世界が、決して誇張や幻想によるものではなく、自分の世界の地続きに確かに存在していることを知りました。
本当に、にんじんみたい。
「赤毛のアン」の髪は本当に赤かったんだろうな、こんな風に。
「ありえない」と思い込んでいたことは、ふとした時にリアルへとひっくり返る。
オセロが並べ替えられていくような音を、耳の奥に聞いた気がしました。
鮮やかに オセロかたんと 音たてる