ARTICLES

ブログ、コラム、イベント情報などの新着記事

昨年の夏から月に一、二度のペースで静岡県浜松市でのとあるプロジェクトに関わっています。
「多文化共生」をテーマに、ダブルルーツの子どもたちとのコミュニティ創生にあたるこのプロジェクト。
→webサイトはこちら

音楽畑の人間からすると、浜松市というのは「YAMAHAやKAWAIという二大ピアノメーカーのお膝元」という認識だけが強かったのですが、このプロジェクトに関わることで初めて、私はこの街にブラジルにルーツを持つ人々がたくさん生活されているということを知りました。

JR浜松駅構内、グランドピアノのインスタレーション



日本語とポルトガル語の混じり合う環境(家庭においても学校においても)の中に生活する子どもたちは時に、周囲との言語環境の違いから、学習過程やコミュニケーションに困難を抱えることがある。
そうした困難の中でも、密度と温度の高いコミュニケーションを続けることで自己肯定感を培ったり、豊かな音楽体験を持てないものか。
このプロジェクトは、そうした課題意識を共有するさまざまな組織の方達の協働によって実現しています。

私はいつも、「音楽はことばを超える」というのはその通りだけれども、ある前提を抜きにして語られる言葉ではない、と思います。
確かに、さまざまなニュアンスや感情とその奥行き、それらは「ことば」で表しきれないもの。
けれどそれは「ことば」というツールを使ってもなお、伝えるには追いつかないという、厳然とした事実を前提にしてようやく語られるものです。
「ことば」は完全無欠ではない、それでも人が何かを語る上で欠くことの決してできない、心と思考の容れ物なのだ、と思います。
その「ことば」という器に不安や不足をぬぐいきれない人は、自分を表す術が足りていなかったり、伝えたいことを伝えるための適度な距離や方法を保てなかったりする。

これから出会う子どもたちにはそうした課題がある、といった事前情報を元に、浜松に通うことになりました。
その中で自分が気づいたこと、考えたことを記録しておこうと思います。

続きます。

関連記事一覧